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ロック回想録🍑梅ちゃん日記

J.J. Cale『Okie』── 何処へ行ったって、俺はOkie。

TONIGHT’S OPENING ALBUM / RECORD STORY

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AFTER HOURS RECORD STORY

J.J. CALE『OKIE』|1974

世界中のミュージシャン達が、
J.J. Caleの「失敗」を真似し始めた。

J.J. Caleは若い頃、
Chet AtkinsやLes Paul、Chuck Berryなんかを
真似よう真似ようとしたが、うまくいかない。

ところが、真似に失敗した「出来損ない」が、
かえって味のある個性となり、
J.J. Cale独特の音になった。

その音に、

Eric Claptonが惚れた。
Neil Youngが惚れた。
Mark Knopflerにも、その影が見えるくらい。

真似に失敗した出来損ないの音。

それを今度は、
みんなして真似をする。

今日Birdの棚から出てきたのは、
1974年のJ.J. Cale『Okie』。

そのジャケットには、貨車。

ギターが一本。

野菜なんかの収穫用に見える木箱に乗っかった足元が、
膝から下だけ見えている。

履いているのは、
三角形の革を幾重かにはいだように見える
茶色いブーツ。

同じWest Coast。

“Rock & Roll Shoes”を脱がなかったPocoの足元は、
草むらに隠れて見えなかったけど、
(9月2日の投稿文)

Caleのこれは、
足元だけが見えていて、上半身が見えない。

気になって当時の写真まで探してみたら、
同時期の写真に、よく似たブーツ姿がある。

J.J. Caleは、
いつもの靴のままRock & Rollへ行った。

West Coast Rockが流れるPocoの田園風景を、
J.J. Caleの乗った貨車が横切って行く。

Whiskeyを飲みながら
『Okie』を聴いていると、

「俺は根っからOkie丸出しだ」

と靴が言っていながら、

「あんたらみたいに、
そんなファッショナブルでもないしね……」

と、上半身は貨車の扉の向こう。

テンガロンハットで顔を覆って、
腕を組んだままずるっと寝転がっている
J.J. Caleの姿まで見えるような気がする。

『Okie』。

Oklahomaの人を意味する言葉だけど、
もう少し深い意味もある。

1930年代。

干ばつと巨大な砂嵐が農地を襲った
“Dust Bowl”と大恐慌の時代。

仕事と暮らしを求めて
OklahomaなどからCaliforniaへ渡った人々を、
人は“Okies”と呼んだ。

時には、侮蔑を込めて。

それを知ってから、
もう一度ジャケットを見る。

貨車。

農産物でも入れて運んでいたような粗末な木箱。

履き慣れた靴。

ギター一本。

そして大きく、

OKIE。

この言葉が歩いてきた歴史を知ると、
1974年のRock Starのジャケットとしては
なんとも不思議な景色の中に、

世間一般の「成功」とは
少し違うところにいたJ.J. Caleがいる。

Tulsaで育ち、
Los Angelesへ出たCaleは、

エンジニアの仕事をしながら演奏し、
Whisky a Go Goのステージにも立った。

ちなみに、本名はJohn Weldon Cale。

“J.J. Cale”という名前は、
同名のJohn Caleとの混同を避けるため、
Whisky a Go GoのElmer Valentineが
提案したとされている。

でも、レコードは売れず。

音楽業界を諦めて、
Tulsaへ戻ったCaleだったんだけど、

ある日、
Tulsaのラジオから自分の曲が流れてきた。

“After Midnight”。

歌っていたのは、Eric Clapton。

諦めてTulsaに帰ってきた耳に、
Eric Claptonの声で、
自分の作ったメロディが飛び込んで来た。

そこから、もう一度道が開く。

今度はNashvilleへ。

Tulsa → Los Angeles → Tulsa → Nashville。

貨車はまた走り始める。

──それでもJ.J. Caleは、
そこからRock Starになろうとはしなかった。

富や名声を追いかけることにも、
あまり興味がなかったらしい。

働かなくてもいいくらいの金が入ればいい。

そんな趣旨のことを語っている。

Caleの音も、よく“laid-back”と呼ばれる。

飾らず、
前へ前へと出てこない、そんな音。

余計なものを削って、
何もしていないみたいな顔をしたメロディ。

音楽人生、
いろんなところまで行ったあとで
単純なところへ戻ってきたような曲。

……そんなことを思いながら『Okie』を聴いていたら、

Caleの家の裏庭の生け垣から、
ビールで酔っぱらった豚の鼻先が
覗いているのが見えてしまった。🐖

さて。

腕利きのミュージシャン達も参加している『Okie』は、
NashvilleのWoodland Studioや
Mt. JulietのBradley’s Barnなど、
いくつもの場所で録音されている。

でも、TulsaにあるCaleの家でも録った。

家の裏のポーチ。

日本でいえば、
縁側とかベランダみたいなところで
録音したんだって😆

アルバムのタイトル曲、

“Okie”。

録音場所は、

Cale’s House,
Tulsa, Oklahoma.

自宅の裏ポーチだったんだよ。

Los Angelesへ出て、
うまくいかなくて帰ってきて、

自分の曲だけが先に世界へ出て、

また呼び戻されて、

Nashvilleまで走って。

その男が、
『Okie』というアルバムを作って、

“Okie”を自宅の裏ポーチで録る。

憧れた他人のサウンドのようになれなかったことが、
彼の音をつくった。

世間的な価値観の「成功者」になろうとしなかったことが、
彼の人生をつくった。

もう一度、表ジャケットを見る。

貨車。

木箱。

ギター一本。

履き慣れた、いつもの靴。

何処へ行ったって、俺はOkie。

J.J. Cale『Okie』|1974

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